“筋金入りのイシダイ師”という言葉は、まさに名手、橋本陽一郎さんのためにあるのだと思います。
五島市在住で釣りものは豊富にあるのに、わき目も振らずにイシダイだけを一途に追いかけています。
春夏秋冬、一年中磯に立ち、とにかく釣る釣る釣りまくる熱き熟練の技巧派なのです。
橋本さんの釣りを最初に目の当たりにしたのはもう20年以上も前です。私が以前勤めていた釣春秋社が発行する石鯛倶楽部の取材(シマノインストラクターのため幾度も取材させて頂き、表紙も数回飾って頂きました)でした。
その気迫というか、凄みというか、手持ちで構え穂先を凝視するその姿は、近寄りがたいオーラがありました。
気負い過ぎて釣りをすると“魚が殺気を感じて警戒するから釣れない”などと言ったりしますが、橋本さんにはあてはまりません。
あまりにも凄すぎて、魚が“ごめんなさい”と言って、降参しながら浮いてくる、そんな感じです。
ちょっとたとえが大げさですが、実際の釣りを見ると、そんな印象なのです。その勇姿は還暦を過ぎられた今でも健在なので嬉しい限りです。
最近はYouTube動画で、橋本さんの釣りを拝見できますが、やはり画面で見るのと現場(磯)で見るのでは迫力が違います。
カメラのファインダー越しでも、ピーンと張った緊張感は伝わります。そして刻々と動く自然状況を心眼で捉えて、次の一手、二手、三手…を考え圧倒的な集中力で戦略を組み立てていきます。
橋本さんは高校時代、趣味でよく海に潜っていたとのことで、きっと海中のイメージがとても豊かで、その想像力が集中力に繋がっているのだと思います。
まるで海の中が見えているような攻略シーンのシャッターを切ったのは1度や2度ではありません。
この冬も厳寒期の低水温もなんのそので、数、型ともに最高と言える本イシを次々にゲットされました。
写真は、2月9日、13日、18日、26日に福江島の大瀬崎で仕留められた価値ある釣果の数々です。
2月といえば下の図に示す通り、1年で一番水温が低い時期です。福江島西岸の大瀬埼も例外ではありません。しかし“そんなの関係ない”とばかりに、極寒に負けず最高の実績を上げられたのです。
そこで『昨年より好調ではないですか?』と尋ねると、昨年の方が良かったと、意外な返事でした。
サザエに反応が良くなかったことが、その要因のひとつとのことでした。そのため対策として、ジンガサを多用することで食い込みに繋げたそうです。
ちょっとしたことですが、柔軟で素早い対応力が名手たるゆえんなのです。
もちろん、潮を読み磯の形状を把握してマキエで魚を寄せ、ポイントに留めるマキエワーク。さらに食い気を立たせ、さらに走らせる技術があってこその1枚1枚であることは言うまでもありません。
そして嬉しいことに、橋本さんの釣果には石師魂アイテムも一役買っているのです。
橋本さんは、ラセンホルダー大(イエロー、ケイムラブルー)、ゴムパイプスティック(イエロー、ケイムラブルー)を特に愛用されています。
ラセンホルダーは、セットすることで仕掛けが直線的になりアタリがダイレクトに伝わり、しかも絡み防止にもなるスグレモノです。
ゴムパイプスティックは、自由にカットして使用できオリジナル仕掛けが楽しめるゴム管です。橋本さんは、自分の好みにカットして、スクリューサルカンとオモリの間にセットして活用されています。特殊ゴムでクッション性抜群のため根掛りも外しやすく、耐久性も抜群です。
いずれもイシダイにアピールするカラーで、橋本さんもその威力を実感されています。
春磯もこれらのアイテムを使って、間違いなく好釣果を上げられることでしょう。
話は変わりますが、この春の戦略として、橋本さんのようにジンガサを多用するのもひとつの手ではないでしょうか。
年々赤貝の入手が厳しくなるだけに、私も、普段イシダイが喰いなれていて食い込みいい軟らかエサを見直したいと思います。
とにもかくにも、名手の釣りには釣果アップのヒントがたくさん詰まっています。今後も橋本さんの釣りを追い続け、応援させて頂きたいと思っています。
(石師魂プロダクトディレクター/武富)