夢を現実に!
狙うは日本記録
釣り人 山中耕一郎
聞き手 武富淳(石師魂プロダクトディレクター)
イシダイシーズン真っ盛りの秋です。 水温が徐々に下がると、一発大物を求めて磯へチャレンジする底物師が一気に増えました。
チャレンジといえば、とってもスケールの大きい挑戦をされている夢追い人がいます。キャスティング福岡店勤務、底物クラブ、石鯛野郎の山中耕一郎さんです。 こちらは秋でなく春の乗っ込み期が中心で、場所は東京の南約1,000kmに位置する小笠原諸島の母島。
狙いはもちろん日本記録のクチジロ。 夢とは言え、小笠原は「夢に一番近い島」といっても過言ではないでしょう。
そんなチャレンジャーに対する興味は尽きません。 そこでご本人へインタビューを試みました。
武富 山中さんは近年小笠原へ通われていますが、2024年はどのような日程でしたか?
山中 6月8~19日の日程でした。
武富 釣行というよりも、大遠征ですね。と言うより大冒険ですね(笑)。それだけ魅力的な島なのでしょう。
山中 もちろんです(笑)とは言え単独釣行はなかなか難しいので、毎年同行してくださる底物クラブ 渦磯会 辰巳 真一朗さんはじめ仲間の皆さまのお陰です。
武富 早速本題に入りますが、エサは何を使われていますか?
山中 本土からの持ち込む場合は、もっぱら冷凍のシラガウニです。
武富 ウニエサではご愛用のエサホルダーは使われましたか?
山中 はい、もちろん使いました。エサホルダー【https://ishidama.kz-kizakura.com/?p=147】はツケエをしっかり固定するので、ハリ掛かりをより確実にするために欠かせないアイテムです。口ばしがとても大きく喰い方が豪快なクチジロや大型本イシなどは特に有効だと思います。
カラーは新色のピンクグローとイエローの2色を持参しました。今回興味あったのは、新色のピンクグローです。魚がとても興味を持つピンクと太陽光線を蓄えて発光するグローの混ぜ合わせなので、どんな効果があるのかとっても興味深かったです。
武富 実際に使われてどうでしたか?
山中 すごくアピール力が高くて反応が良く、しっかりエサをくわえ込むためハリはほとんどジゴクを捉えていました。
他の石師魂アイテムは愛用している遠投ゴムテンビン【https://ishidama.kz-kizakura.com/?p=143】のイエロー、ケイムラブルーを使用しました。軟らかく弾力のある素材のため、ラインを傷めずにスムーズに仕掛けを送り込むことができるためとても気に入っています。
とにかくクチジロは賢いので、カラーローテーションをしてアピール力を持続させながらアタリをものにしていきました。
武富 石師魂が夢の楽園でもお役に立てて嬉しい限りです。話は前後しますが、母島はどのような特徴の釣り場ですか?
山中 母島列島は、母島、向島、平島、姪島、妹島、姉島の6つの島からなり、それぞれにクチジロを狙える場所があります。各磯は小笠原海流の影響を受け、当然、北、南、風向き等で水温が違い、水深は45m以上ある所がほとんどです。
武富
スケールが大きいですね。釣り場選びが大変でしょう。
山中 はい、確かにこの中から有望な瀬を探すのは難しい作業になります。でもそれだけにとても楽しくワクワクで、今回は臥牛角から乾﨑周辺の地磯での勝負となりました。
武富 釣り場選びの目安はありますか?
山中 先ず頭に入れておきたいのは、クチジロとイシダイは全く違う魚ということ。 激流の中でも果敢に餌を取ることもあり、アタるタナも浅ダナ(3m等)から深ダナ(50m以上)でも喰ってくることもあります。水温、餌の臭いにも敏感です。
ちなみに、母島は北側、南側では2℃前後違うことも珍しくありません。海況と適正水温を参考にしながら絞っていきます。
武富 小笠原へのチャレンジは、クチジロの習性、母島の海況についてしっかり把握する必要がありますね。 仕掛けはどんな内容になりますか?
山中
下図が今回の仕掛けですが、工夫として道糸の巻き数にこだわっています。 リールにPE15号は150m巻けますが、90mに止めています。ラインを少なめに巻くのはドラグ力を高めるためです(ドラグをガチガチに締めても魚によってはラインが出る事がありますが…)
武富 ガチガチのドラグを引き出すクチジロのパワーは凄いですね。
山中
まさに力対力の真っ向勝負ですね。いずれにしてもドラグ力を高めればラインが出て緩むケースは少ないのです。
大きくて分厚い口元のジゴクをより確実に捉えるためには、合わせのパワーをダイレクトに伝える必要があります。そのためにはできるだけ直線的な仕掛けが理想です。
武富 聞けば聞くほど、クチジロと本イシの違いが分かります。 さて、肝心なところ、釣り方について教えてください。 まず、アタリの出方は?
山中 アタリ方は色々なパターンがありますが、特徴としてフワフワとラインが弛んだり食い上げ幅が長くてリールでラインを巻き上げたりするアタリもあります。
武富 合わせのタイミングは?
山中 クチジロの歯は鳥のくちばしの様な形状のため、イシダイとは合わせのタイミングは全く違い、早合わせは禁物です。
手持ちの場合、しっかり手に魚の重さを感じてから合わせます。それでもやり取り中、取り込み時にハリ外れがあるのがクチジロです。
置き竿中心で構える際、基本的に魚が完全に乗る状態まで竿を触らないこと。
いずれにしても、手持ち置き竿共に手の感覚を大切に丁寧に釣りながら合わせることを心がけています。
武富 やり取りはどうですか?
山中 まず強烈なパワーに対応するには専用のタックル(特に竿)を使うこと。
私は先にご紹介しているように幻覇王 別誂 ホワイトキング543Qを愛用しています。
またクチジロはとことん抵抗するので、できるだけ体力の消耗が少ないやりとりが肝心です。自身の身体を使い膝に竿を乗せてのやり取りも体力を消耗せずに取り込みができます。
とにかく狙っている記録級のクチジロは賢くて何度もアタることはないと思われるので、ワンチャンを大切にしています。
いずれにしても、モンスターと勝負して勝つために、自身の体力強化を心がけています(2航海では9日連続釣りができる準備が必要)。
武富
最後にチャレンジャーの方にメッセージをお願いします。
山中 行けば釣れると思われがちの小笠原ですが、近年はそんなに甘くは無いのが現実です。そのためしっかりシーズンを選んでチャレンジしています。
私が春に遠征するのは、産卵後に回復した魚がターゲットだからです。
この時期のクチジロは年間でも最も引きが強く、記録級のクチジロに出逢える可能性があります。
武富 そんなクチジロの楽園をいつまでも守り続けていきたいですね。キャッチ&リリースの規制があるようですが、どのような内容ですか?
山中 夢を現実にできる可能性がある大切な釣り場です。 小笠原母島、父島にはレギュレーションがあります。
今回遠征した母島は、一航海6キロ以上を一匹のみキープできます。 またエサに関してですが、先にも言いましたが、本土からの持ち込む場合は冷凍ものに限られます。これは世界遺産の生態系崩壊になるためで、そこまで細かくきめられています。これも釣り場を守るためです。 また、ハリ掛かりしたクチジロは全てタイトプールで回復させてから網で掬いリリースしています。 もちろん釣り場のゴミは全て持ち帰りいつまでも楽しめる釣り場保全に心がけています。
武富 小笠原に限らず釣り場保全の意識はどのエリアでも大切なことですね。貴重なお話どうもありがとうございました。
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