入門編のはじめに、イシダイ釣りの魅力について触れたいと思います。
好奇心旺盛の知恵もの(ある水族館ではイシダイが曲芸をします)との駆け引き、相手の息を感じながらその気にさせて走らせた瞬間、渾身の力で合わせてからの力対力の真っ向勝負…。
この釣りの魅力をひとつひとつ書き出せばキリがありません。
あえて一言で言うならば、“ワクワクドキドキ感”ではないでしょうか。
手持ちの構えだとダイレクトなアタリが全身に伝わり、大げさにいうと心臓が張り裂けそうになります。
こんなワクワクドキドキ感は日常では中々味わえないと思います。
しかしイシダイが居てアタリがあったとしても闘いのゴングがならないと、一対一の勝負は始まりません。そこがイシダイ釣りの奥深さでもあり、面白いところです。
そのゴングとは?
そう、潮です。
生きた潮が流れイシダイを本気にさせないと、勝負は成立しないのです。活性がある潮でないとエサを食って反転して突っ走ってくれないのです(イシダイは歯が硬いので反転して走らないとカンヌキに掛けるのは難しいのです)。
そのため、常に潮を感じています。潮流は地球と月の関係で動きます。大げさにいうと地球の大自然を飛び越え、宇宙を感じながら竿を出しているのです。
だから竿を持ってじっと構えていても、頭の中、そしてハートは目まぐるしくいろんなものを感じているのです。
そして活性を高める潮が流れ、相手をその気にさせ走らせた時、ゴングが鳴り響きます。
静から動へ…。
一気に穂先が突っ込み、渾身の力で合わせを入れます。強烈なパワーを受け止め、大格闘の始まりです。
必死のやり取りで魚を浮かせ、磯上に好敵手が横たえた時、イシダイ師は至福の充足感に包まれます。
神経を研ぎ澄ませた真剣勝負ですが、この釣りの面白いところは、身近で楽しめることです。さらに、ワイヤーを使った頑丈な仕掛けのため、ビギナーでもビッグな魚を手にするチャンスが十分あることです(ビギナーズラックと言われます)。
たとえば60㎝のオナガはそれなりの釣り場へ行って、ある程度の経験者でなければ手にすることはできないでしょう。でもイシダイ釣りはビギナーズラックで60㎝のイシダイを手にすることは十分あり得るのです。
また、イシダイ釣りはエサが高価で入手が難しいという印象の方も少なくないようですが、実際はそうではありません。
メインとなるエサ、ガンガゼを扱っている釣具店は増えており、予約して準備してくれる渡船も多く便利になりました。
金額も上物釣りとほとんど変わりません。
以前と比べて入門しやすくなり、何と言っても近年の高水温期は、近場でイシガキ釣りが楽しめます。
是非チャレンジされて、この釣りの魅力を体感していただけると嬉しい限りです。
間違いなく新たな釣りの世界が広がります。
石師魂プロダクトディレクター/武富 淳
(その2に続く)