釣行者 森 直人(そうずらブッコマン道)
日時 2023.10.31
場所 東伊豆 富戸ゴロタ
潮汐 干12:07 満17:31
最近めっきり涼しくなり、朝夕は肌寒さすら感じる季節になった。釣り人にとっても魚にとっても活動しやすい環境となり、いよいよ”秋磯”のシーズンである。
”春のノッコミ”と双璧をなす石鯛の二大ハイシーズンだ。世の底物師達はこぞって磯に繰り出しそれはもう目覚まし釣果を次から次へと叩き出して大いに業界を賑わしてくれる。
で、私はというと春夏秋冬ハイもオフも関係なく一年中無計画にブッコミ続ける非合理的釣り人の代表格なのだが、こと”秋磯ハイシーズン”でおいしい思いをした記憶がほとんどない…。いや、単に自分の腕が足りないだけなのだが…。
結局いつも釣果に巡り会うことができるのは真夏と真冬…つまり酷暑も寒波も釣り人自体を減らし、結果ライバルの少ない状況になれば必然的に私の打率が上がる…というなんとも説得力のない釣果を得てドヤ顔しているわけである。
無駄話が長くなった…。
で本題。
とにかく石鯛が釣りたい!!
個人的テーマを上げれば「秋ハイシーズンに釣れないジンクスを打破したい」といったところか。
しかしハイシーズンとはもちろん底物だけではなく、ルアー青物にイカにカゴ釣りに、ボチボチ上物師たちも活動が活発になってきて名のある沖磯地磯はどこも大混雑…。
ではどうする。釣り人が釣りしないような場所でやればいい!!水深もなく潮もろくに通さず生命感のまるでない場所…。いやいやそんな場所では石鯛なんてとうてい…。いや、ある。
ゴロタ。
いままであまり脚光を浴びてこなかった”ゴロタ遠投”というジャンル。
水深3~5mあるかないかの激シャロ―では石鯛釣りなんて…と思ってる人も多いはず。
しかしこれが意外、時にはなんの変哲もないゴロタが一級ポイントに変貌することも…。
ただしハッキリ言おう。遠投能力が必要で回収に時間がかかり、根掛かりも多発するゴロタは正直効率の良い釣りではない。
とは言え、状況がハマれば短時間でいともたやすく本命に出会えることも…。
そんな特殊なゲーム性を持つのがゴロタの釣りだ。
釣行レポートの前に、以下にゴロタゲームの個人的見解を記しておくので参考にしてもらえればと思う。
(あくまで経験の浅い若輩者の見解である。ベテランの方々はどうか温かい目で見守っていただければと…。)
ゴロタ(エリアにもよるが)は石鯛の”付き場”ではなく”餌場”であると私は思っている。
つまりそこ自体に石鯛が「住んでいる」のではなく、「餌を食いに来る」場所と認識している。
ゆえにそのほとんどが回遊性の個体であることが多い。つまり餌を食いに来るタイミングに合わなければボウズ、しかしそのタイミングにバッチリ合うと、捕食しにきた個体ゆえ威勢が良く捕獲率も高い、という感じ。
ズバリ「釣れる」か「まったくなにも起こらない」かのゼロ百勝負。しかしその博打性の高さが魅力的でもある。
ではどのようなタイミングで餌を捕食しにくるのか…は、私自身まだまだ経験とデータが浅くハッキリとしたことはわからない。
が、朝夕どちらも「マズメ」は多くの魚にとって重要な捕食のタイミングであり、石鯛に関してもそれは言えると実感している。これから経験とデータを重ねいろいろなパターンを立証していきたいと思っている。
※以下、ゴロタ釣りで個人的に思う特徴を記しますのでご参考までに↓
長所
・回遊してくる個体は威勢が良くフッキング率が高い。
・タイミングが合えば答えは早く、短時間勝負が可能。
・やりとりが長いので楽しい。
・エサ取りが少ないので消費が少ない。
・日本はゴロタ列島、可能性は無限。
短所
・場所にもよるがやはり根掛かりは多発する。
・遠投能力を要求される。
・関東以南のゴロタはだいたいウツボが無限に存在し地獄絵図になる。
・もともと魚のたまり場ではないので本命が釣れないとき、それ以外に手堅くお土産を確保することが難しい。
・回遊がなければ一日竿がピクリとも動かないことだってざらにある。
こんなところであろうか…。
さて、前置きが完全に本編より長くなってしまっているが、とにかく実釣レポートをお届けする。
今回、東伊豆は富戸のゴロタエリアにやってきた。(画像1)
ここは何度かチャレンジしていてブダイやワサ、小型の石鯛の釣果を上げたことがある。
漁港と地磯に挟まれ絶好の回遊路だと踏んでいる(画像2、3)。
やはり回遊待ちとはいえ、「魚の棲み処」が近くにあるというのは非常に重要な要素である。近くに地磯がある、漁港がある、消波ブロックがある…など。
当日は昼過ぎ…とはいっても現地入りしたのはすでに午後3時前。
あれやこれや準備をして実釣を開始したのは午後3時20分頃だ。
もう10月も後半となると陽が落ちるのが早く5時過ぎには暗くなり釣りができなくなる。実質1時間半くらいの実釣時間である。
今回の餌は前回釣行で余って活かしておいたサザエ8個と、暇なときに自分で捕獲してきた小粒のヤドカリ10個(画像4)。短時間ならこれだけあれば十分。
仕掛けは古今東西ブッコミ釣りの基本形であるシンプルな三ツ又仕掛けに石師魂ラセンホルダー、餌ホルダー、ナマリキャップを組み合わせた「三ツ又仕掛け令和カスタム(笑)」(画像5)。
まずはヤドカリを投入してみる。60m沖のポイントに投入(画像6)。
なだらかに水深が深くなっていく地形で、その途中に仕掛けを置いているイメージである。
ゴロタとゴロタの間に餌が入ってしまうと魚が見つけずらく根掛かりしてしまうので、根に付ける…というよりは岩の上に置いておく…みたいなイメージだ。
しばらく待っているとビヨンビヨン穂先を揺らすアタリ…。(あ、ヤツか…)(画像7)。つまりお友だち(ウツボ)である。
サザエやヤドカリを使用する場合、これはもう避けようがない。おまけにウツボの魚影の濃いゴロタはマガニやトッポガニ等のカニ餌でも普通にウツボの餌食になる。
で、仕掛けを回収しようとすると根掛かってる…(画像8)。やむなく捨てオモリを切ることに…。
やはりある程度の根掛かりは覚悟したい。仕掛けとオモリは多めに用意することをオススメする。
さて気を取り直し再度ヤドカリを投入。
日暮れまで幾ばくも無いが、この釣りは焦ってはいけない。ポイントに入れたらほったらかしておくくらいでいい。
同行の上物師の見学をしていると…なんか穂先が動いたような…(画像9)と思った瞬間竿が思いっきり水平線に向かってズッギュ――――――ン!!!!(画像10)
キタ――――――――――!!!!!!!!
すぐさま合わせをくれると、良い手応え!!(画像11)
横に走り強烈な抵抗をする魚は間違いなく石物だ!!浅いがゆえに縦横無尽に走りまくり、そしてファイトが長い、これが遠投の醍醐味だ!!(画像12)
感触からしてガッチリフッキングしてそうだ。焦らず存分に闘いを楽しむ。
すると打ち寄せる波間にしぶきを上げて躍り出てきたのは…本石だ!!!
波とともに一気に引きずり上げる。持ち上げた瞬間ズシリと重量を感じる(画像13)。最高にハイな瞬間だ(画像14)。
やや痩せた個体ではあるものの計測してみると53.5cm2.45㎏の立派な石鯛(画像15、16)。個人的には十分ドヤ顔できるサイズだ。
しかもここは水深3~5m程のドシャロ―エリアである。
すごく不思議じゃないですか!?こんな浅場でこんな大きな魚が釣れるなんて!!これがゴロタ遠投である!!
さてさて興奮冷めやらぬ状態ではあるが、冷静に次の一投を投じる。チャンスタイムは続いている可能性があるからだ。
残念ながらその後は、ウツボに餌と仕掛けを蹂躙され火照った体を見事にクールダウンし納竿となった。
いやいや大満足ですよ。たった1時間半ほどの釣行で運良く釣果に恵まれたのだから。
今回はうまくいきすぎた感があるが、もちろんボウズで帰路につくことも少なくない。
しかし、短時間勝負でもこのようにタイミングさえあればバチコーン!!とハマることもある!!
勝負のハッキリした浅場のゼロ百勝負、これがゴロタ遠投の魅力である。
日本は磯に恵まれた磯釣り列島である…が、同じくらいゴロタの多い「ゴロタ列島」でもある。
興味のある方は、限りない可能性を秘めた未知のエリアにチャレンジされてはいかがだろうか。
おまけ
生まれて初めて見る石鯛を前に感極まり顔を引きつらせる次女(3ヵ月)(画像17)
使用アイテム
ラセンホルダー、エサホルダー、ナマリキャップ、牙突石鯛15号
今回再び(前回レポート)寄稿の機会を与えてくださったキザクラ武富淳、眞﨑克久両氏に感謝致します。
(静岡県在住)