鹿児島県大隅半島、内之浦は超ド級が手にできる夢のフィールド。とくに春はチャンスこそ少ないものの、
アタれば5~6㎏を手にできる可能性があるからたまりません。
「内之浦はロケット発射基地としても有名で、14番の釣り座からは発射場の頭が見えます(右上)。人類は遠い彼方の宇宙に夢を見ています。イシダイ釣り師にとってもこのエリアは夢のフィールドです。わずか竿先十数メートルの希望ですが、その思いはとても大きいです」
とは言え、幸運にも大魚信があったとしても、食わせて走らせて取り込むまでは一筋縄ではいきません。 大格闘の末、仕掛けをブチ切られて涙を呑む底物師も少なくありません。それだけにとても燃える釣り場なのです。
3月15、16日の両日、千歳一遇のチャンスを信じてデカバンの実績が高い14番に立ちました。もともと15日だけの竿出しだったのですが、大物らしきアタリがあったので、予定変更で一日延ばしたのです。
「大物らしきアタリがあった14番。イシダイは磯に付く魚なので、2日目も必ず現れると信じて同じ瀬を希望しました」
15日(下り中潮初日、満潮7時半頃)、14番で竿を出した時、カウンター20~22でモゾモゾとツケエを素バリにする不気味な魚信が私をその気にさせました。 潮は右前方から下げ潮がジワリと当たっており、ポイントは足元です。
「竿下で不気味なアタリを察知。超ド級がいつ食ってきても不思議ではない状況に、久しぶりに緊張と興奮に包まれました」
持参していた赤貝、ヤドカリ、ガンガゼが食われた時点では本命がいそうだな、と思う程度だったのです。 でも赤身を少し残したサザエと胴体を付けたヤドカリをエサ巻き糸でグルグル巻いたツケエが、静かに素バリにされたときは大型の気配プンプンで久しぶりにゾクゾクしました。
仕掛けは寄せ玉ゴムに新製品の自在スイベルをセットしたシンプルなもので、中々その気にならない相手をどうにか走らせようと20号⇨10号⇨8号と徐々にサイズダウンしていきました(自在スイベルは、サルカンサイズ1以下を結んだ瀬ズレでは取り外しが自由にでき、さらにオモリ交換がワンタッチで素早くできるスグレモノです)。
「オモリを素早く変更できる自在スイベルをセットした瀬ズレ。そのメリットをいかして20号、10号、8号とサイズダウンしましたが、かなりのつわもので走らせることができませんでした」
「自在スイベルはテンビンの役割もするスグレモノ。大きい方の輪はサイズ1以下のスイベルが通るため、瀬ズレにそれを使うと取り外しが自由にでき、中通しオモリにも即座に対応できます」
しかし違和感を軽減する作戦は実らず、昼過ぎには 反応がなくなってしまいました。どこかにいるかもとカウンター5から25までの竿下を探りましたが、小物がつつくだけで再びアタリはなく、結局納竿となってしまいました。
そして再チャレンジの16日。気合十分で14番の磯に立ちます。 前日に赤貝とガンガゼを潰したマキエをたっぷり撒いたのできっと再び現れるはずです。 8時を回った頃、願ってもない重々しい魚信がありました。
やっぱりいたかと、ボルテージが急上昇です!何せここは日本記録魚が出てもおかしくないフィールドなのです。仕掛けを上げると、チモト近くのエサホルダーに潰されたような噛み跡がありました。大物の仕業かと、身震いしました。
ところが残念ながらこの日は、3投ほどしてアタリが途絶えました。 でもまた現れるかもしれないと足もとを丹念に攻めます。しかし小物のアタリばかりで進展がありません。
納竿の時間が刻一刻と近づきます。そこで未練がましく足元に期待しつつも別の竿で沖めも攻めることにしました。 前方右沖30~40にいい感じの瀬がありました。しかし繰り返し打ち返してもエサ取りが触る程度です。
納竿の2時まであとわずか。最後の望みで狙いを変えます。 左側カウンター28のカケ上がりに仕掛けを落ち着かせました。いい感じに潮も当たっていました。
「✖辺りがヒットポイントです。潮行きを教えてくれる泡がヒタヒタジワジワと当たってきて、とてもいい感じでした」
打ち返し打ち返しの積み重ねでポイントを作る時間がないため、一気にマキエ効果を図るためガンガゼ5個掛けで投入します。切れ目を入れてエサホルダーでしっかり固定すればバラけません。この5個掛け作戦は意外に効果的です。
「ちょい投げでは足元のようにマキエを撒けないのが残念なのですが、切れ目を入れたガンガゼを5個付けてマメに打ち返せば、ポイントへの集魚効果は期待できます。エサホルダーでしっかり固定してうまく投げればバラけません」
仕掛けは、新製品のジョイントホルダー、ラセンホルダー、それに寄せ玉ゴムを利用したプロトタイプで、20号のオモリを2個セット(自分ではこの組み合わせパターンが根掛りを外しやすい気がしています。また40~50号の重いオモリを持って行かなくていいので磯バッグの重さ軽減ができます)。
その1投目でした。
しばらくして竿先が少し動きました。何かが食っているようです。やがて穂先の揺れが大きくなり、勢いよくお辞儀し始めたので少し誘うと加速して突っ込みました。 2日間で始めて剛竿が食い込んだ瞬間です。
確実に竿に乗せ合わせを入れます。力強い抵抗は本命のようですが、狙っていた魚とは明らかに違います。 諦めないファイトを全身で受け止め、寄せて一気にブリ上げました。磯上に横たわったのは2.5㎏ほどのイシガキでした。
「大物ではありませんが、久しぶりの遠征だけに手にした1枚は嬉しいものです。狙いを変えて1投目のヒットだったので、寄せ玉ゴムをはじめ石師魂パーツがしっかりエサをアピールしれくれたのだと思います。ちなみに20号連結オモリは、根掛りを外しやすいように感じています」
「石師魂の道糸、銀朱石鯛も私の強い味方です。粘り、強さ、視認性の良さ、どれをとっても大のお気に入りです。18、20、22、24号の4規格なので、状況に応じて使い分けています」
「今春の内之浦はシケが多くて船があまり出ていず、当然ながら朗報も少ないです。でもこの海域の乗っ込みシーズンのポテンシャルはとても高いため、天候に恵まれてイシダイ釣り師が入りだせば大アタリが多発する可能性は十分あります。今度こそはとリベンジを近い、14番の磯を後にしました」
2日間全力を尽くし、久しぶりにチャレンジした内之浦の釣果だけに、サイズに関係なく嬉しさが込み上げます。 大物を手にできなかったけど、それらしき相手と一触即発のワクワクドキドキの駆け引きができただけでも十分です。再挑戦を誓い内之浦の海を後にしました。
追伸 私が釣行した数日後、同じ14番 で67㎝4.8㎏のデカバンが上がったと、釣友が教えてくれました。私の手に負えなかったあの大物らしきアタリの主だったのでしょうか?とにもかくにも、上げた方に『おめでとうございます』とお伝えしたいです。そして、メラメラとファイトが湧いてきたのは言うまでもありません。
「お世話になった由佳丸。近藤船長のススメで竿出しした14番で、久しぶりに胸が高鳴りました。ありがとうございました」
/武富 淳