初めてイシダイに出会ってから、まもなく10年が過ぎる。イシダイに例えるなら、当時の私はサンバソウ。イシダイの『イ』の字も知らない小娘だった。
エサは、ウニ!という、なんともユニークなイシダイ釣り。グレ釣りに夢中だった私が、唯一、グレ竿を置いてでもやってみたい!と思った、釣りだった。
きっかけは、鹿児島県南さつま市の秋目漁港に集う釣り人たち。気さくに話しかけてくれて、自慢の釣果を見せてくれる。
【クチバシのあるギラギラした紫色の大きな魚】それが、私が初めてみたイシダイの印象だった。
実は、その時はまだ、イシダイにシマ模様があるなんて知らなかった。きっと初めてみたイシダイが、相当大きかったんだろう。
秋目の釣り人は、大層オーバーリアクションな私に、自慢の古竿を譲ってくれた。私がイシダイ釣りを始めたのは、そんなきっかけだった。
高級魚として知られるイシダイ。
釣り人にはイシガキダイと共に「石物」と呼ばれ、特別に扱われている。その寿命は他を圧倒するほど長く、大きくなるにはかなりの時間がかかる。一説には60㎝クラスは20年ほど生きているらしい。
性格は好奇心旺盛だが慎重で、力はとても強い。その魅力に気づくのに時間はかからなかった。そうやってハマった底物釣りを、私は今でも続けている。
6月9日(若潮、干潮8時27分)、今年三度目のイシダイ狙いの釣行。目指すは、南大隅町佐多の一級ポイント「タチキリ」。
正直、大隅半島での釣りはあまり経験がない。したがって、この日は少しテンションも高め。
エサはガンガゼ。60個を馴染みの釣り具屋で購入。水温が高いことから、エサ取りも多いと見越して、いつもより多めに持ってきた。
仕掛けは愛用の石師魂瀬ズレ宙釣りゴムテンビンと49本ヨリワイヤー仕掛け(#45ハリ16号)、それに手放せないエサホルダー。これがあると安心してどんなエサでも装着できます。
さて、佐多の磯はどうだろう。どんな魚がいるのだろう。朝の空気と非日常のワクワクした気持ちが私は大好きだ。
朝は、肝心。一日の気持ちを大きく左右する。
アタリがあるか?根掛かりしやすいか?それらしい気配があるか?
いずれにせよ、イシダイ釣りは頭を使う。さて、日が昇ったら試合開始だ。
仕掛けを投入。早い時間はエサ取りが多かった。仕掛けが着底する頃、もうガンガゼはない。『コツリ』という軽やかなオモリの音だけが、竿を伝って手元に届く。
オモリと糸と竿と私。一本に繋がる時間。そこにやってくる獲物を、私は決して逃しやしない。
そしてその瞬間は突然やってきた。
小さな前アタリから始まった前兆。その直後、弓を引くようにしなやかに海面へ吸い込まれていく穂先。
よく、3段引きを待てなんて言うけど、そんな余裕はない。突然の襲撃に必死になって、一気に巻き上げる。バランスを崩さないように、慎重に。
上がってきたのは、憧れの縞々模様が立派なイシダイだった!
早い時間に本命をゲットして、満足。
その後、余韻に浸る。また釣れるだろう。今日はもっと釣れるだろう。
そんな甘い考えの私に、イシダイは気づいてか気づかずか、、、
魚信が遠のく。
いつまでたっても気配はない。そこで、船長に瀬替わりを申し出た。
提案されたのは、名礁『ケバノハナレ』!
そこはまさに、玄人のための特訓場のような磯だった。
沖を向けば潮が動かず、内側を向けば激流。腕を試すには十分すぎる環境だったが、私はまだまだ小娘。それに対応する術を知らない。
アタリをかすかに感じる場面はあるものの、どうにもこうにもうまく行かず、結果断念。元の「タチキリ」へ戻り再開。
小さなアタリを拾っていると、イシガキダイがヒットした。これは、嬉しいお土産。最後に姿を見せたのはオキナヒメジ。
私はまだまだサンバソウ。これからも、大好きなイシダイ釣りの旅は、続く。。。
使用渡船=このみ丸(田尻港)
PS
下の2点の写真は、当日の模様をYouTube「上園歩美の釣りチャンネル」でご紹介しており、その中から抜粋したシーンです。動画は前編【https://www.youtube.com/watch?v=bKrRR7QXeT8】と後編【https://www.youtube.com/watch?v=vAZAUY7VtPY
】がありますので、こちらもよろしかったらお楽しみください(^^)