釣果レポート Fild report

4㎏ジャスト! 思わぬ大物の登場に有頂天外

                 レポーター:森 直人(そうずらブッコマン道)
                釣り場:静岡県南伊豆 中木 大根島 2024.5.19
               

GWが明け、世間の一般労働者達は連休後に襲いかかる耐えがたい喪失感と絶望感に苛まれながら「日常」という渦に再びその身を投じ、精神を闇の深淵へと沈めていく…。

そんなさなか、毎日スマホの海況と釣果情報に血眼を走らせ、仕事中もそわそわしながら頭の中は次回の釣行の妄想に支配され異様な熱を発している人種がいる。石鯛師…。

そう、この時期は石鯛二大ハイシーズンとされる一つ「ノッコミ」なのである。

ロングバケーションを終えてしょぼくれている場合ではないのだ。青年たちよ、磯に立て。

 

で、私はというとGWに旅先で食した鶏刺しに対し、それに適応する消化酵素を持ち合わせていなかったのか、キンキンに冷えたビールと共に我が消化器官にウォータースライドしていったそれは五臓六腑を完膚なきまでに蹂躙し、しばらく床と厠の往復以外の行動が不可能な状態にまで落とされた…。

その後どうにかこうにか復調の兆しが見えてきたさなか、子どもが持ってきた流行り風邪という素敵なプレゼントの追撃を受け再び万年床にその身を沈めたのだった…。

 

毎度毎度前置きが長くてすいません。

 

で、大幅に出遅れた感が否めないが、とにもかくにもようやく身体が回復し自立した生活が可能となったので一縷の希望を胸に沖磯へと出張ることとなったのである。

 

とその前に、連休の散財から懐事情を考慮し、餌代を浮かすため前日に磯へカニ獲りに行ってきた。まだ外気温が低いのであまり出ていなかったがポツポツと捕まえているうちにそこそこの数になった。

釣行場所に選んだのは私の馴染みの南伊豆中木エリア。

このエリアを代表する名礁の一つ「大根島」に渡礁した。ここは過去のデカバンの実績もさることながら先週も銀ワサが出ていてさらに期待が高まる。

 

 

釣り座は広く足場は良好。病み上がりの身としてはとても助かる。

 

今回は私の後輩の太田君も同行。

彼は石鯛を始めてまだ数か月ほどだが、既に3㎏オーバーを筆頭に本石を複数枚仕留めていて、凡庸な私なんかよりもはるかにハイセンスな腕前の期待のルーキーである。

当日のチョイスは生け簀のなかで放置されていた半死半生のオニヤドカリ20発。

 と前日磯で調達してきたトッポガニを25発。

仕掛けは底や棚に這わせるタイプを使用。石師魂ラセンホルダー、ジョイントホルダーで瀬ズレからハリスを安定させ、アピールアクセントとして寄せ玉ゴムを一つ、大口径チューブテンビンのスムーズな送りで食い込ませる作戦。

 

さて諸々準備を終えて期待の第一投目は痩せこけた栄養失調気味のオニヤドカリ。

 

 

足元から水深20m以上あるドン深ポイント。一度底まで落とし引きずりながら少し上の段差に仕掛けを乗せる。

このポイントはデカカンダイの巣でもあるので、あわよくばストロングファイトを楽しませてもらおうと下心を含みつつ、まずは海からの反応をじっくり待つ…。

が、まるで音沙汰がない…。

おかしい。もう5月ともなれば小型のイシガキやその他餌取りが増えてくる時期なのに。やはり長いこと生け簀の中でお魚のソーセージで飼育されていたことによりヤドカリ独自の臭気が失われ、魚に違和感を与えているのだろうか…。

 

などと不毛な思考を巡らせること30分。竿先がのっぺりしなってビヨヨ~ンって…。まあそうなるよね…。竿を持ち上げてみるとウツボトルネードに蹂躙され変わり果てた姿の仕掛けだけが上がってきた。ある意味良かった。

無益な殺生を好まない私だが、期待と希望に満ち溢れた栄えある第一投をこうも侮辱されてはヤツの姿を前にして八つ裂きにしてやりたい衝動を抑えることができるかどうか自信がない。

 

さて仕掛けを組み直し次の一投だが、また同じことをしては元の木阿弥。今度は目先を変えて昨夜採取してきたトッポガニを投入。

すると先ほどまでとは打って変わって穂先にビシバシ魚信の嵐。

上げてみると胴体部分が完全消失。

この変わり様…カニすげぇ…。絶望しかけていた状況に光明が差しやる気が復活。

 

その後何度か打ち返し素針を引く。なにかいる…。開始から2時間半、餌取りらしきアタリが落ち着き小さく押さえては穂先が戻る静かな魚信。最初は小さなイシガキが引っ張っているのかと思った。

 

 

すると少し深く穂先を押さえ…

ゆっくりと重く…ズズズズ…ズギューーーン!!!

キタ――(゚∀゚)――!!!!!! マッハで駆けつけ竿を起こすとズシンッ!!!おもっっっ!!!

重量感に驚いている間もなく強烈なシメ込みにのされまくる。

この瞬間頭にふとよぎる…ここ、カンダイの巣なんだよな…。そう思った瞬間完全にデカタンコブが糸の先で傍若無人に暴れ狂っているイメージに支配される。隣でやっている後輩にも「カンダイだよ~」と笑顔の対応。

しっかしなかなか浮いてこない。けっこう手強いぞ。

しばらく引いて引かれてを繰り返していると海面に赤い巨体がゆらり…じゃなかった!!!シマシマじゃん!!!

一気に全身に緊張が走り総毛立つ。先ほどまでカンダイとのたまい余裕をかましていたアホヅラが笑えてくる。

しかしここで焦ってはいけない。ここでしくじったあかつきには今夜は記憶喪失になるほど酒を浴びて脳内に刻まれた令和6年5月19日を白紙にする作業に勤しむことになる。

 

針掛かりを確認し波が打ち寄せるタイミングで一気に引きずり上げ、同行者のアシストにより無事捕獲に成功。

獲った…え?デカいよコレ!!!ノッコミ個体らしい分厚い魚体!!毎回思う、「このオーラは魚とは思えない…。」この重量感、至高の瞬間、この魔物に魅せられ狂う人間の気持ちを改めて実感させられる。

やったぜオラーーー!!!

今夜は祝杯だ、記憶を無くすほど飲もう…。とか余韻に浸っていると隣でやっていた太田君が吠える!!「キタ!!!」

マジか!!?息つく間もなく彼のファイトを見守る。すると上がってきたのは40㎝を超えるイシガキダイ!!伊豆半島周りでは良型である。

沖磯デビュー戦で魚に出会えるだけ上出来だ。ましてやお土産としては最高のシロモノである。やったね!!

 

 

さてそんなこんなでボルテージMAXの展開に完全に酔いしれていた二人だが、その後、海からの反応は渋く、後輩が悪戦苦闘の末小型のイシガキを一枚追加、やがて完全に沈黙し終了を迎えた。

まだまだ水温も安定しないこの時期、魚の活性にもけっこうムラがあるようだ。で、意気揚々と磯を上がり渡船事務所にて計量…4㎏ジャスト!!!長さは59㎝でした!!

ノッコミ狙いとのたまってはいたものの、思わぬ大物の登場に有頂天外。いや~もう大満足ですよ。私からしたら今シーズンこの一枚でもう十分なくらいです。って言いながら数日後にはもう釣りに行きたくなっているとは思うが…(笑)。

磯の王者…この怪物との出会いは単に「嬉しい」とか「楽しい」とか一言ではくくれない…なんというか…とにかく凄いのだ!!

こればかりは味わった人間にしかわからない。大の大人が夢中になり、狂喜しはまり込む…。私のような下手の横好きでも続けていればたまにはこんな大きな夢にも出会えるのだ。語彙力のない私の駄文では伝えきれないことが沢山ある。とにかくやってみてほしい。次に夢を掴むのはあなたかもしれない…。

 

今回再び寄稿の機会を与えてくださったキザクラ武富淳氏、眞﨑克久氏に感謝致します。

(静岡県在住)